扁桃周囲炎・扁桃周囲膿瘍
どんな病気ですか
急性扁桃炎が悪化し、口蓋扁桃周囲にまで炎症が広がった状態です。炎症だけの場合が扁桃周囲炎、さらにひどくなり膿瘍形成したものを扁桃周囲膿瘍と言います。喉頭まで炎症が波及し、喉頭浮腫から窒息するリスクもあります。
この病気は、耳鼻咽喉科で扱う病気のなかでも時間との勝負になるもののひとつです。「扁桃炎がいったん良くなりかけたのに、また悪くなった」「片側だけ強く痛む」「口が開けにくい」——こうした変化は、放置してはいけないサインです。当院では日本耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会認定の耳鼻咽喉科専門医が、内視鏡で気道の状態まで確認し、入院が必要な段階かどうかを見極めます。西武新宿線「井荻駅」から徒歩4分です。
3行でわかる扁桃周囲炎・扁桃周囲膿瘍
急性扁桃炎の炎症が、扁桃の周りまで広がった状態です。
片側に強い痛み、口が開けにくい、こもった声が手がかりです。
喉頭まで炎症が広がると窒息のおそれがあり、時間との勝負になります。
こんな症状はありませんか
急性扁桃炎との違いは、「片側に強い」ことです。次のような症状が現れます。
あてはまるものはありますか
- ✓片側だけの激しいのどの痛み・・耳のほうまで響くように痛みます
- ✓口が開けにくい(開口障害)・・炎症が周囲の筋肉に及ぶために起こります。この病気を強く疑う所見です
- ✓つばが飲み込めない・・よだれが口から流れることもあります
- ✓こもった声(含み声)・・熱いものを口に含んだような話し方になります
- ✓高熱、強い倦怠感
- ✓首のリンパ節の腫れ
- ✓口臭
「良くなりかけて、また悪くなった」に注意
扁桃炎の治療中、いったん熱や痛みが軽くなってから再び悪化する場合、この病気へ進んでいる可能性があります。抗菌薬を飲んでいるのに悪くなるときは、必ず受診してください。急性扁桃炎については「急性扁桃炎」のページをご覧ください。
すぐに受診をおすすめする目安
救急要請(119番)を検討していただきたい症状
- 息が苦しい
- 息を吸うときにヒューという高い音がする
- つばも飲み込めず、口から流れ出てしまう
- 横になると息苦しく、座っていないとつらい
これらは、のどの奥が腫れて空気の通り道が狭くなっているサインです。診療時間を待たず、救急要請を検討してください。
その日のうちに受診していただきたい症状
- 口が開けにくい
- 声がこもる
- 片側だけ激しく痛む
- 首が腫れて熱を持っている、押すと痛い
- 水分が取れない
口が開けにくい、こもった声。この2つがそろったら、時間との勝負です。
なぜ起こるのですか
多くは急性扁桃炎から続いて起こります。扁桃の炎症が扁桃を包む膜の外側へ広がり、そこに膿がたまった状態が扁桃周囲膿瘍です。
なりやすい方
- 扁桃炎をくり返している方
- 20代から40代の方・・比較的若い世代に多く見られます
- 喫煙される方
- 糖尿病など、感染に弱い状態にある方
- 疲労や睡眠不足が続いている方
放置すると起こること
膿が首の深い部分へ広がると深頸部膿瘍、さらに胸のほうへ及ぶと縦隔炎という、生命に関わる状態になります。また、のどの奥の腫れが強くなると気道がふさがれます。この病気が「様子を見てはいけない」とされるのは、この経過があるためです。
当院ではこう調べます
- 口の中とのどの視診・・扁桃の左右差、口蓋垂(のどちんこ)が反対側へ押されていないかを確認します。当院で行っています
- 内視鏡による観察・・口からは見えない喉頭の腫れ具合を確認し、気道が狭くなっていないかを評価します。入院が必要かどうかの判断に直結します。当院で行っています
- 血液検査・・炎症の強さ、全身への影響を確認します。当院で行っています
- 画像検査・・膿がどこまで広がっているかを詳しく調べる必要がある場合には、CT検査が用いられます。必要と判断した場合は、対応可能な医療機関と連携して進めます
治療はどう進みますか
◆切開排膿:口から膿瘍部分を切開し、膿を出します。膿瘍を作る菌は空気に弱いので、切開で空気を入れることが重要です。当院では切開排膿は行っていないため、必要な場合は対応できる医療機関へご紹介します。
◆抗生剤投与:感染のコントロールのために抗生剤を投与します。
◆ステロイドホルモン:喉頭浮腫を併発した場合や炎症が強い場合はステロイドホルモンを投与します。
◆摂食困難な場合、補液(点滴)による水分補給を行います。中心静脈栄養や経管栄養が必要となることもあります。
※基礎疾患の治療:糖尿病などの基礎疾患がある場合、その治療が必要です。
※気管切開:喉頭浮腫が著明な場合、気管切開を行います。受診時に呼吸苦がなくても、急速に悪化し呼吸苦が増悪、気管切開が必要となることがあります。気管切開が間に合わず、生命にかかわることもあります。
入院が必要になる場合
次のような場合は、入院での治療が望まれます。
- 水分も食事も取れない
- 気道が狭くなっている
- 膿が首の深い部分へ広がっている
- 糖尿病など、全身の状態に注意が必要
当院で診察のうえ、入院が必要と判断した場合は、対応可能な医療機関へ速やかにご紹介します。
治ったあとの見通しは
排膿処置を行えば、多くの場合数日から1週間程度の治療で改善します。しかし、治療しているにもかかわらず症状が改善せず、深頸部膿瘍や縦隔炎をおこし、生命にかかわる方もいます。再発予防のためには、口蓋扁桃摘出術が必要です。
また治療中に肺炎、胸水、気胸、胃十二指腸潰瘍、肝腎機能障害、敗血症、心筋梗塞、心不全、肺塞栓、脳梗塞、脳出血など生命にかかわる重篤な全身合併症を併発することもあります。
再発予防について
扁桃周囲膿瘍はくり返すことがある病気です。一度経験された方は、再発を防ぐために扁桃を摘出する手術が検討されます。当院では手術は行っておりませんので、対応可能な専門施設へご紹介します。
手術を考えるにあたって知っておいていただきたいことは「扁桃摘出術をお考えの方へ」のページにまとめています。
よくある質問
Q1. 扁桃炎とどう違うのですか?
A1. 扁桃炎は扁桃そのものの炎症で、両側に起こることが多い病気です。一方、扁桃周囲炎・膿瘍は炎症が扁桃の外側へ広がった状態で、片側に強い痛み、口が開けにくい、声がこもるといった特徴が加わります。危険度がまったく違います。
Q2. 抗菌薬だけで治りませんか?
A2. 炎症だけの段階(扁桃周囲炎)であれば、抗菌薬で改善することがあります。しかし膿がたまってしまうと、薬だけでは膿は消えません。切開して膿を出すことが必要になります。膿ができているかどうかは、診察で判断します。
Q3. 切開は痛くないですか?
A3. 切開は、当院からご紹介する医療機関で、麻酔をしてから行います。実際には、膿が出ることで痛みが大きく軽くなる方がほとんどです。処置そのものよりも、膿がたまったまま我慢している時間のほうがつらいものです。
Q4. 何日くらいで治りますか?
A4. 膿を出す処置を行えば、多くの場合、数日から1週間程度で改善します。ただし経過中に悪化することもあるため、指示された通りに受診してください。
Q5. またなりますか?
A5. くり返すことがあります。一度経験された方は、再発予防のために扁桃摘出術が検討されます。くり返す回数や生活への影響を踏まえてご相談します。
Q6. 様子を見てもよい段階はありますか?
A6. この病気に「様子を見る」という選択はありません。のどの奥の腫れは急速に進むことがあり、気道がふさがれると命に関わります。片側の強い痛み、口が開けにくい、声がこもる——このいずれかがあれば、その日のうちに受診してください。
院長より
扁桃周囲膿瘍は、耳鼻咽喉科の病気のなかでも、私が最も緊張感を持って診ているもののひとつです。受診時に呼吸が苦しくなくても、数時間で状況が変わることがあるからです。
当院では、口の中を見るだけでなく内視鏡で喉頭まで確認します。口からは見えない部分の腫れ具合こそが、入院が必要かどうかを分ける情報だからです。そのうえで、外来で対応できる状態か、すぐに入院設備のある施設へお願いすべきかを判断します。
「扁桃炎が良くなりかけて、また悪くなった」「片側だけ痛い」「口が開けにくい」——そう感じたら、迷わず受診してください。西武新宿線「井荻駅」から徒歩4分です。のどの症状全般については「のどの痛み」のページもご覧ください。
いおぎ耳鼻咽喉科 院長 三宅 恵太郎
執筆・医学監修:いおぎ耳鼻咽喉科 院長 三宅 恵太郎
日本耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会認定 耳鼻咽喉科専門医/日本めまい平衡医学会認定 めまい相談医/日本嚥下学会認定 嚥下相談医
最終医学確認:2026年9月26日
経歴・資格の詳細は「医師紹介」のページをご覧ください。
